津尾尋華の漫画実写化映画鑑賞

漫画の実写映画の感想など書いていこうと思います。

魁‼︎男塾 2008年

魁‼︎男塾 2008年。坂口拓監督・主演。

 

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B級漫画実写映画化としては最高峰と津尾さんが推してる男塾の登場です。

 

漫画実写映画の主な失敗は、

①尺が足りないため、話をまとめるために強引にエピソードを削ったため、意味がわからなくなってしまったストーリー

②アクションやファンタジー物にありがちな、CGや特撮で処理をしているが予算が足りず誤魔化しきれない安っぽさが漂う

③事務所の都合で配役された、演技力の厳しいアイドルや旬の俳優•女優による演技

④①と③の合わせ技で産まれた原作に存在しないオリジナルキャラ。必然性なく性別の変わる原作キャラ。

⑤キャラの内面描写は再現されないのにとりあえず見た目だけ原作に合わせた、無理矢理な髪型や、三次元だときつい髪の色をしたキャラ

 

あたりが主な原因で、逆に多少ストーリーや外見をいじっても、キャラクターが原作らしい行動をとるのであれば、きちんとキャラを掘り下げてくれているということで評価される傾向があります。

 

失敗例はいろいろ浮かぶと思うのですが、まあ代表はデビルマンドラゴンボール鋼の錬金術師あたり。成功例としては原作を改変しつつもキャラのブレがなくまとめたデスノートDMCカイジあたり。

 

前置きが長くなりましたが、男塾は、抑えるところは抑えつつ、原作のエピソードをバッサリカットしてオリジナルエピソードを入れてるんですが、これがガッツリマッチしており、まあ原作でやってもこうなるよな!っという展開のため、好感度が高いです。キャラクターがわかってるというか、無駄エピソード感がない。冨樫=照英をあてがきしてるのも強いです。

 

原作通りなら直進行から始まり、油風呂、男塾名物 愕怨祭あたりを経て驚邏大四凶殺なんでしょうが、構成はだいぶ変えてあります。

 

入塾前日から開幕、車に轢かれるがピンピンしてる虎丸、兄貴の墓参りをする富樫、女をはべらして豪学連に絡まれる秀麻呂、それを助ける桃。ガッツリ街中で日本刀背負ってます。

 日本語ができて、Jができる俳優がいなかったとのことでJと雷電は存在自体がカット。まあ、往年のドルフラングレンでも引っ張ってこないときついと思いますので英断かと思います。話のメインは桃と富樫、一般人代表の秀麻呂の3人に絞り、秀麻呂の反応で男塾の異常さを際立たせながら、富樫に男塾らしいかっこよさを演じさせます。この役割分担が原作と違いつつも、わかりやすい男塾の描写となっています。

 

入塾から鬼ひげ、飛行帽、塾長の登場。再現度たけえ!

塾長は、この人しかいねえっ!て感じの麿 赤兒

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流れるように2号生との対面式に進み松尾の瓶杯、田沢の紹介も入って理不尽な男塾事情が展開されます。2号生相手に戦いを挑む虎丸富樫、赤石先輩が登場して桃と分けたところで入塾式終了。

 

戦闘要員である桃、富樫、虎丸を目立たせ、田沢、松尾の顔見せ、鬼ひげ、飛行帽、塾長のキャラをたてて、二号生で男塾の異常さとついていけない秀麻呂をクローズアップ、後の豪学連に備えて赤石先輩の強さも抑えておくという完璧な導入。ここまで20分。

 

男塾についていけない秀麻呂を描写しつつ、九九の練習、ブリーフの落とし物の発覚、油風呂の流れ。油風呂はカットインから民明書房の絵巻物を背景に千葉繁の声でナレーションというこれ以上ないほど男塾リスペクトです。

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ここからオリジナルエピソード。

紙飛行機で富樫にラブレターがやってきます。デートする富樫。

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やってきた女子高生に一目惚れする富樫。

野次馬する秀麻呂、田沢、虎丸。

飯を食いに牛丼屋に連れて行く富樫。

デートの最後にからかわれてたわかる冨樫。怒る虎丸。

騙された女を守り「いいんだ。わかってんだ。俺なんかが女と付き合えるわけねえんだ」と自嘲する富樫。照英渾身の演技!

1人になってから男泣きする富樫を迎えにくる桃、帰り道、集まってくる仲間たち。

 暁‼︎男塾の黒須信長に恋愛話がありましたが、オリジナルエピソードでありながら、浮かれる富樫、冷やかす秀麻呂、怒る虎丸、集まる仲間たちの下りが見事に男塾を再現しています。値千金のオリジナルエピソード。

 

ここから、関東豪学連との対決。

Jがいない都合上大四凶殺が大三凶殺になっていますし、氷のリング、富士山の火口のリングはだいぶ簡略化されていますが、原作を踏襲。

突鋼槍が出た瞬間赤石先輩が負けるのはギャグかと思いましたが、虎丸対月光、富樫対飛燕、桃対伊達はみられる戦いでした。

ここに寿命蝋。大鐘音のエール、秀麻呂の塾旗あげが差し込まれ、秀麻呂の成長も描写されます。大満足。

 

良い点

キャラが原作に忠実

オリジナルエピソードに違和感がない

端折っても抑えるところは抑えて男塾感は強い

油風呂、雙生独居房、瓶杯、大鐘音、大塾旗、九九、ブリーフ禁止、塾長が10人いれば太平洋戦争は日本勝利だった、など細かくエピソードを拾っている

民明書房千葉繁の鉄壁のコンビ

バトルが原作ほど異次元ではないがそれなりに見られるものとしてまとまっている

長ランでのアクションが服がたなびいてかっこいい

鬼ヒゲは原作準拠ではなくカッコよくて、理解のある教官

ちょこちょこ入るギャグが概ね滑らない

秀麻呂の成長が映画の縦軸としてしっかりしている

 

 

悪い点

拳での連打などバトルが現代的

炸裂する月光のワンハンド•バックブリーカー

決戦前夜、熊の着ぐるみと特訓する虎丸

低予算すぎてシンプルになりすぎたのがカッコ悪い怒粧墨

 

総じて低予算の割に高い完成度でした。

押忍!88点

 

 

 

 

 

珍遊記  2016年

珍遊記 2016年 山口雄大監督。松山ケンイチ主演。

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魁!クロマティ高校、激情版エリートヤンキー三郎、極道兵器の監督という今後もおせわになりそうな山口雄大の監督作品。てか、この人ババアゾーンも、地獄甲子園も監督してるのね。

 

冒頭からババアとじじいがちんこの話をするというバリバリの画太郎節。倉科カナ演じる玄奘がちんこちんこと連呼するのや、ジジイババアの造形など序盤の原作再現度はかなり高いです。松山ケンイチ演じる山田太郎のやからものムーブも流石に上手く、珍遊記の実写映画化という点だけに絞ればかなりの高得点なんですが。ただ、珍遊記の実写化を待ってた層はどれだけいるんですかね…。

 

 もともと原作自体、北斗の拳や、シティーハンターキャプテン翼幽遊白書るろうに剣心スラムダンクなどの看板漫画ほど人気を博したわけでもなく、短館系の知る人ぞ知る映画化というわけでもなく、カルト的人気を誇ったというほどでもないギャグ漫画。画太郎先生が漫画界では特異な立ち位置にいることは間違い無いですが、25年前に連載のそこそこ人気のギャグ漫画を実写にしたニーズがそんなにあるとは…。

 

たけし、きよし、やすしのたけし軍団やラーメン屋の珍珍、居酒屋での画太郎大暴れのシーンとかほんと再現度が高いというか、漫画太郎の雰囲気は出してるんですよ?でもまあ、原作知らない人が楽しめるかというと、そもそも漫画太郎作品はは一般受けしねえ!ってなっちゃうんですよね。

 

後半は原作がまとまっていないため、綺麗にまとめるためにオリジナルキャラクター龍翔の恋と太郎との戦いに話がシフトして原作からさらに乖離します。話は綺麗にまとまっていますが、中華ファンタジーだったのに外人部隊が出てきて銃火器で戦うなど、初見の視聴者はますます置いてけぼりになるんじゃ無いでしょうか、いや、画太郎先生らしいんですけど。

 

珍遊記原作ファン、漫画太郎ファンにはオススメ、原作未読で画太郎ファンでもなければ訳がわからないギャグ映画というテイストじゃ無いでしょうか。個人的には完成度高いと思います。70点。

 

 

 

 

 

HK  2013年

HK  2013年 福田雄一監督 鈴木亮平主演

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あんど慶周の漫画「変態仮面」の実写映画化。もともと原作が、「正義のヒーローがパンツ被った変態だったら面白くないか?」というコンセプトで描かれたギャグ漫画なので、変態感がリアルになる実写映画にとはすこぶる相性がいいです。

鈴木亮平は15キロ体重を増やして、脂肪をおと

すという肉体改造を行って挑んだとのこと。

下の毛とか相当頑張って処理したのかしら…。

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SMの女王の母とマゾの刑事の父との間に生まれた色丞狂介は、腕っ節は弱いが正義感が強い高校生。

転校生の姫野愛子に一目惚れ。立て篭り時間の人質になった彼女を助けようとして、その場のパンティーを被ったことから変態仮面に覚醒する。

なんの説明にもなってないですが、パンティーをかぶると変態の血が覚醒して、人間が30%しか使えない身体能力を100%使えるようになるという北斗の拳あたりから一時期流行ったあの理屈でパワーアップします。

 

シリアスに馬鹿なことをやることの面白さを味わうというB級映画の見本のような出来で、海外でも好評だったとのこと。

パンティをかぶる鈴木亮平、美しい鈴木亮平の生尻、例の格好の鈴木亮平などが面白いと感じる人には楽しめると思います。

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「学校でパンティーを被っていいわけがないだろう!」とか、「より変態な方が、強いとは限らんということだ」とか、「パンティーが俺の顔と一体化している!」というセリフを大真面目に繰り出すのは、面白いです。

 

中盤からはムロツヨシ演じる大金玉男が、学校を乗っ取ろうとして変態仮面と対立し、刺客を送り込んでくる展開。佐藤二郎演じる真面目仮面を筆頭に、さわやか仮面、男気仮面、細マッチョ仮面、偽変態仮面などが登場します。

福田監督作品特有の、長いコントを見せられているような感覚は好みが分かれると思いますが、個人的には原作を実写にうまく落としこんで今風にした序盤と比べると、ムロツヨシと佐藤二郎の演技が原作からはみ出しており、入り込めませんでした。同じく変態の偽変態仮面ともかく、黒幕に変わった個性は必要だったかなと。あと、ヒロインの清水 富美加(現千眼美子)が作中で洗脳されるという今となっては非常に際どいネタが入っています。ただ、この内容で1時間40分はちょっとつらかった。

 

ちなみに、小栗旬が主演を希望したけど事務所から許可がおりなかったそうですがさもありなん。

 

映画館で鈴木亮平の肉体とケツを楽しむ分にはよかったんでないでしょうか。ストーリーは福田監督作品が好きなら及第点、合わない人には厳しいと思います。

55点 3敗2分け。

 

 

 

シティーハンター  1993年

シティーハンター  バリー・ウォン監督。ジャッキー・チェン主演。

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こちらは香港での映画化。私立探偵冴羽獠が、家出した社長令嬢・清子を連れ戻す依頼を受け、豪華客船に乗り込むが、その船がテロリストに乗っとられてしまう。

 概要だけなら、探偵という違いはありますが、凄腕の探偵冴羽獠がトラブルに巻き込まれて美女を助けるというシティーハンター構文に近いです。

 

 できれば、「美女の依頼を受けて香との仲が悪くなって、更に獠が敵に狙われるも、なんやかんやで全部やっつけて、エンディングでポエム言いつつ一枚絵が引いていくなかでGet Wild」をやって欲しかったですがこれは、フランス版シティーハンターまで待つことになります。

 

一見食い合わせの悪い配役に見えますが、コミカルな演技もできてアクションが得意、ちょっとエッチな役もこなせる2.5枚目と考えると冴羽獠=ジャッキーはベストマッチなんですよね。

ただ1970年後半からからジャッキーの映画は毎年日本で公開されており、特にプロジェクトA以降、スパルタンX、プロテクター、ファーストミッション、サンダーアーム、プロジェクトA2、ミラクル、など年2作以上公開されることもある定番状態が、20年近く続きました。当時の子供達の間でジャッキーフィーバーが巻き起こったほどのスター。

ということで、何をどうしようとジャッキーはジャッキーとして刷り込まれており、冴羽獠にはなりえませんでした。まあ、バリバリカンフーで戦うし、銃の名手ってシーンもあまりないですからね…。古代進のカッコしたキムタクに違和感バリバリなのが近いかしら。

 

オープニングから原作イラストを使用して、主題歌もジャッキーの歌うシティーハンターのテーマがながれ、気合の入れ方が伺えますが、スタートすると普段のジャッキー映画よりだいぶコミカルより。細かいギャグが散りばめられており現代ではかなり辛いです。有名な春麗のコスプレに代表されますが、なんかこうシティーハンターの解像度が低くて作中の遊びが多いわよね…。特に本筋と関係のないとんねるずの「ガラガラヘビがやってくる」の広東語カバーがフルバージョンでライプパフォーマンス込みで流れたり、ストリートファイター2のコスプレをして、原作再現して戦ったり。

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謎なのが、バカラに強いギャンブラー。

テロリストが金持ちを集めて、バカラで勝負してテロリストが勝ったら死刑、負けたらもう一度勝負という内容で乗客を殺していくのですが、女の乗客を守ってテロリストとバカラ勝負を行い29連勝で死刑を防ぎます。30回目に勝てない手が来ると、カード投げでテロリストを倒していくというかっこよさ。テロリストの戦力をかなり削いでくれますが、特に原作再現でもネームドキャラでもない無から生えてきた映画版のみのオリジナルキャラクター。

ジャンプ本誌ではブラックエンジェルズ飛鳥や男爵ディーノがトランプを武器に活躍しましたが、実写でトランプ武器のキャラなんてこれでしかみたことがないレアキャラです。何故オリキャラをこんなレアな設定にしたのか…。また、こいつジャッキーとの絡みがほぼなくて突然生えてきてそのまま退場するんですよね。「シティーハンター」を映画にする上で絶対に必要ないエピソード。この辺りに、監督の、タイトルは拝借したけどやりたかったことは違うんだよね感を感じます。

 

最終的には、獠がテロリストを退治してめでたしめでたしで終わるんですが、ガンアクションが薄く、カンフー過多、コミカルシーンが多目という以外にも、全編を通して獠と香の関係が、原作の「お互いを信頼している最高の相棒であり、互いに憎からず思っているが素直になれない」ではなく、「香は明らかに獠のことが好きでアプローチを望んでおり、獠は槇村との約束で手は出さないが、美しく育った香のことを恋愛対象にしたいと思っている。」あたりはまだしも、獠が香を仕事上の相棒としては全く信頼していない、香も仕事より恋愛優先という描写が原作との乖離を大きくしています。

 

獠が香をじゃけんに扱うシーンに、原作にあった密かな愛情が漂わないし、香は獠に対してあからさまに「女」を出すことを躊躇しないんですよね。原作の掘り下げが薄すぎて残念でした。

 

90年代は北斗の拳シティーハンターろくでなしブルースと原作の売れ行きに反して、ことごとく原作解像度が低いので、漫画実写化が地雷というイメージを作り上げた戦犯な期間な気もします。思い浮かぶ実写化映画の成功例2000年以降が多いんですよね。

 

35点 3敗1分。

 

 

 

北斗の拳  1995年

北斗の拳 トニーランデル監督 ゲイリー・ダニエルズ主演。

 

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地上が焦土と化し、酸の雨がふる世紀末。

シンの支配する帝国サザンクロスに向かうケンシロウから開幕。

ハリウッドというお国柄なのか、現実的に荒廃した世界ならこうなるという想定なのか、ヒャッハーどもが闊歩する世界なのですが、メインウェポンは「銃」。

 

マッドマックスの世界で拳法家が戦う話がマッドマックスの世界そのまんまに戻ってるじゃねえか!

 

大筋は原作そのままで、ユリアを奪われたケンシロウがシンを倒しに行く途中バットとリンと出会い、シンの軍団を倒しながらサザンクロスに向かうというストーリー。

なんですが、結構改変されています。

 

悪い点

・シンがリュウケンを殺しにくるが銃で殺す

 拳法を使え!

・百裂拳が高速の猫パンチ。

 全く打撃ダメージがない。いちおう秘孔をついているという想定なのだろうけど最後の秘孔をつくモーション以外高速で相手を撫で回しているようにしか見えない。

北斗神拳が全く生かされてない。技名もでない、言わない。普通の打撃系格闘技。秘孔をつけ!

ケンシロウ対シン 

 シンの頭突きからの金的で勝負が決まる

  これが…、南斗聖拳だと…?

・バットはナイフで戦う。リアルアメリカンボーイスタイル

・スナイパーからケンシロウを助けて死ぬバット。とにかく銃は拳法より強いので、北斗神拳の意義がない。多分ケンシロウよりランボーの方が強い世界

南斗聖拳が、気を込めた攻撃を当てると触れていない手足から血が噴き出す謎仕様。

ケンシロウは「世紀末救世主」ではなく「北斗の拳」お前は、フィストオブノーススターだ!とかか言われるんですが、北斗の拳がなんなのかよくわからない。

 

いい点

・レイプ、放火、集団暴行、奴隷狩りとヒャッハーの無法ぶりがリアル。黒犬騎士団なみの民度。「エンジョイ!」とかいう。

・決め台詞は流石にそのまま「You are already dead」カッコいい。でも秘孔で倒すシーン自体がほとんどないので、お情け程度の原作再現要素。

 

なんというか、拳法の優位性がほとんどないんですよね…。秘孔も、息を吐けても吸えないとか、聞かれたことになんでも答えるとか、強制的に後ろ向きに歩くとかの神秘的な部分がない。一応百裂拳でタイムラグで死ぬシーンはあるんですが、特殊撮影が大変なのか2回だけ、ほぼ後の格闘シーンは単なる打撃戦です。シンを倒す決め手はとび後ろ回し蹴り。

 

ストーリーもスターウォーズよりというか、世界の調和を取り戻すことが目的で、死んだはずのリュウケンがリンに乗り移って、使命を果たすように託宣を下したり、大いなる力の決める流れの中はたすべき役割があるというような背景が示唆されます。アメリカ人こういうの好きね。

 

難民や悪党どもはリアルで、衣装や小道具も安っぽさがなく作り込まれているのですが、肝心の北斗神拳部分が首を傾げるかなというところ。これ、多分監督はマッドマックスの世界は好きでも北斗の拳に思い入れはないよね。映画の出来としてはそこそこ。北斗の拳としてはイマイチということで65点。 2敗1分

ブラックエンジェルズ  2011年

ブラックエンジェルズ 2011年 内田英治監督。落合モトキ、矢島舞美主演。  

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ミッドナイトスワン、全裸監督の内田英治が監督した80年代ジャンプ漫画の名作「ブラックエンジェルズ」の実写映像化。主演は「桐島、部活やめるってよ」の落合モトキと、°C-ute矢島舞美

正確にはVシネで映画ではないんですが、映画館での上映イベントがあった事と、個人的に平松伸二先生が大好きなので取り上げました。

 

原作は現代版必殺仕事人。自転車のスポークを武器に悪人に仕置きをする雪藤らブラックエンジェルズが、闇の組織龍牙会の殺し屋とたたかい、最終的には世界の命運を決める超能力バトルを行うようになるというお話。映画版は序盤の必殺仕事人パートの映画化です。

仕置き稼業という性質上悪人のタチが悪く、レイプや強盗、金持ちのボンボンのひき逃げなど胸糞悪い犯罪が多く、女をシャブ漬けにするヤクザや独居老人を虐待する外面の良いチンピラなど、アニメ化やドラマ化に難しかった題材のため、20巻以上刊行されているジャンプ漫画としては珍しく映像化されていませんでした。人気はあったためパチスロにはなっています。

 

Vシネのお約束というか、アイドルやグラドルを売り出したい事務所の意向×原作漫画の集客力×おっさん需要という利害関係から作成されるため、そこそこ知名度が高い原作漫画の起用、ちょっとセクシーなシーン、大人向けヤクザやチンピラとの戦いというニーズにマッチした原作が取り上げられたのはある意味必然なのですが、特に原作解像度を高くしようという意図がないため、原作主人公の雪藤と、本来ヒロインでない麗羅のダブル主人公というよくわからない配役になっています。

 

多分原作ファンは、「なぜ松田はでない?」と「なぜヒロインがジュディじゃないのか?」の2つで困惑したと思うのですが、松田の話を挟むほど尺がない。ジュディだと金髪、迷彩服、トゲムチで色気がなくコスプレ感が高い。チャイナドレス&ナイフの麗羅なら違和感が少ない。あたりが原因でヒロインが麗羅に。

 

ストーリー自体は現代版必殺仕事人なのでわかりやすく、バイク便をやってる雪藤が女の子を騙して攫いヤク漬けにして売春させるヤクザを仕置きするお話と、家族を殺された復讐をする為に裏の世界に入った、ヤクザの子飼いの殺し屋・麗羅が情に絆されてヤク漬けの女の子を逃し、制裁を受けるお話を並列して描いていきます。

 

雪藤の昼のメガネで気弱な人畜無害お兄さんと、夜のメガネを外した黒づくめの殺人者の二面性は良く描けてますし、回転するタイヤからのスポーク抜き出し、ヤク漬けで売春させられて殺される女子高生、ヤクザと警察の癒着、返り討ちにあう父親、「地獄に、堕ちろ」など原作のツボは抑えてるんですが、どうしてもどっかでみたお話感は拭えません。

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麗羅パートは矢島舞美のチャイナドレス姿とアクションを楽しむ感じで、原作麗羅の大人っぽさや殺し屋として育てられた悲哀、表の世界への憧れなどは描かれません。殺陣も迫力がないですが頑張ってはいます。、ももスリットナイフ装備や、チャイナドレスアクションは色っぽいです。チャイナドレスだけで4-5着着替えるよ!

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殺し屋として育てられた設定ですが龍牙会などは出てこないです。まあ、猿楽師とか蛇皇院とか魔木とかでてきたら予算足りなくなりますし、変態暗殺術の打ち合いすると現代劇でやらなくなるからね…。

総じて、原作を映像化というよりは、主演2人を活躍させるためのフォーマットとして原作を持ってきたという感じ。ブラックエンジェルズか主演2人のファン以外にはお勧めしにくいです。

 

余談ですが、津尾さん発売日に購入して平松伸二スレで語ろうと思ったら、95%が矢島舞美の話しかしておらずスンってなりました。

 

2、3巻は監督が小美野昌史に交代。山田悠介演じる松田とゴセイジャーでモネを演じたにわみきほのジュディが登場。まあ、一巻が楽しめたらみてもいいのでは…。

 

50点。 2敗。

 

 

 

 

ろくでなしブルース  1996年

ろくでなしブルース 1996年 那須博之監督 前田憲作主演

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原作はジャンプヤンキー漫画の金字塔「ろくでなしブルース」。比較的実写映画と相性のいい不良物にビーバップハイスクールシリーズの那須博之監督という安定感のある布陣。まあ、これなら大外れはないですよね…?

 

映画化ということで原作でも一番人気のエピソード「鬼塚編」をメインに「原田プロ再起編」をミックスして構成。主演は女性ファンも多かったキックボクシング世界王者の前田憲作。芸能活動を初めて初映画主演。ヒロインは小沢真珠

 

冒頭から喫煙しまくりの不良たち、ブルマ姿の女子高生に時代を感じます。

登場した不良がゲーセンでボコられるところからスタート。鬼塚編と原田編をくっつけた都合上、因縁を作るために鬼塚にボコられる原田。いきなりめちゃくちゃな原作改変&原田の格を下げるスタートですが、まあ、原田ファンなんてそんなにいないでしょうからいいんでしょう。尺の都合は致し方なし。

 

映画版鬼塚

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これで10代は無理がありすぎるかと思いますが、大体の登場人物が10代に見えないのでまあよしとしましょう。原作の大物感がなくなってチンピラ感が増したのは残念。

 

場面は移って帝拳高校。

前田さんの登場。

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もう、鬼塚もそうなんですけど似せる気が全くない。帝拳の面々も誰が誰か全然わからない。(かろうじて勝嗣と米示がわかる程度)

更に全員が恐ろしく棒読みです。

 

なんでかというと、登場人物に似せる努力と演技力を引き換えにリアル格闘能力に全振りしてるからなんですね。

キックボクシング世界王者の前田憲作を主役に、ライバル鬼塚役にシュートボクサー・ジャイアン・ジュン、島袋役にプロレスラー・柳澤 龍志。上山役にキックボクシングヘビー級王者・大石亨と格闘ガチ勢を起用し、ボクシング指導にファイティング原田ジム、協力全日本キックボクシング連盟、ワールド・パンクラス・クリエイト、ワールドシュートボクシング協会というリアル格闘映画。帝拳と渋谷軍団の面々もパンクラスやキックボクシングの選手が起用されています。

 

これ、「のぞみウィッチィズ」とか「THE STAR」で見た、格闘物のドラマや演劇をやると格闘パートのレベルの低さで評価が下がるから、本物の格闘家を役者として起用しようメソッドだ!

なるほど!現実ではあんまり見ないけど、演技力が致命的になるからだね!津尾さん心で理解したよ!

 

おかげで不良同士の戦いは、臨場感のあるリアルバトルになっており、ハイキックが飛び交い、軽快なラッシュ、ボディ連打、流れるような腕ひしぎや立ち関節から前転して逃れる不良、炸裂するブレーンバスターが見られます。えー、リアルバトルすぎて不良っぽさがなくなったよ…。

だって鬼塚がガードポジションから腕ひしぎ決めたり、パワーボムくらわせるんだぜ…。お前のような不良がいるか!

 

ここまでやるのなら、バトル全振りでいいと思うんですが、前田千秋原田の恋愛三角模様は組み込まれます。そんなにもヒロインと恋愛要素は不可欠なのですか!?

原田の試合を見に行こうと誘う千秋に素直になれない前田。お前が応援した方が原田が喜ぶからお前が行けよと千秋に言ったところでわざとらしく降り出す雨

千秋「じゃあ、もし、私が原田くんを好きになっても前田くんはいいんだ」

前田「そんな事知らねえよ!好きにしやがれ!」

泣きながらかえる千秋。

立ちすくむ前田。

このパート要る?

 

 

原田のテストマッチの日、吉祥寺に押し寄せる渋谷軍団。迎え撃つ吉祥寺軍団。

この街中のチェイスはいいな。

肉体派揃えてるだけあって動きにキレがある。

街中でバトルしながら島袋対須原、輪島対上山、前田対鬼塚の原作再現カード。

ここが見せ場なので当然、バトルは見れる。セリフも長台詞がないのであまり気にならない。

 

鬼塚対前田も原作通り赤城の乱入、アッパー、ソバット炸裂。ジャッキー映画並みの殺陣で盛り上げます。顎を割られた鬼塚が並外れた精神力を見せて面に出さず、血を飲み込んで隙をみせないシーンがカットされているのは残念ですが、一進一退の攻防ののち、腕を潰され、足を刺された前田の最後の一撃が決まります。

「4歳くらいからやり直しやがれ!」

(原作通りソバットかな?)

炸裂するフランケンシュタイナー

なんでや!

 

ラストは鬼塚を倒した前田が、原田のテストマッチに足を伸ばし、取ってつけたようにテストマッチ相手のセコンドに人質に取られた千秋を助けて、それを見た原田がテストマッチに勝利してエンド。

 

そしてエンディングロールの流れる後ろで始まるろくでなしブルースとなんの関係もない前田憲作のキックボクシングの試合映像。

なんなんやこれ!メインはろくブルじゃなくて前田憲作やったんか!

 

うーん、明らかに原作の方が面白い。

格闘家起用したリアルバトルの面白さはあるけど、全体の棒読み演技が辛かったよ…。

40点。まずは一敗。