津尾尋華の漫画実写化映画鑑賞

漫画の実写映画の感想など書いていこうと思います。

シティーハンター  1993年

シティーハンター  バリー・ウォン監督。ジャッキー・チェン主演。

f:id:jiholeopardon:20210929014528j:image

こちらは香港での映画化。私立探偵冴羽獠が、家出した社長令嬢・清子を連れ戻す依頼を受け、豪華客船に乗り込むが、その船がテロリストに乗っとられてしまう。

 概要だけなら、探偵という違いはありますが、凄腕の探偵冴羽獠がトラブルに巻き込まれて美女を助けるというシティーハンター構文に近いです。

 

 できれば、「美女の依頼を受けて香との仲が悪くなって、更に獠が敵に狙われるも、なんやかんやで全部やっつけて、エンディングでポエム言いつつ一枚絵が引いていくなかでGet Wild」をやって欲しかったですがこれは、フランス版シティーハンターまで待つことになります。

 

一見食い合わせの悪い配役に見えますが、コミカルな演技もできてアクションが得意、ちょっとエッチな役もこなせる2.5枚目と考えると冴羽獠=ジャッキーはベストマッチなんですよね。

ただ1970年後半からからジャッキーの映画は毎年日本で公開されており、特にプロジェクトA以降、スパルタンX、プロテクター、ファーストミッション、サンダーアーム、プロジェクトA2、ミラクル、など年2作以上公開されることもある定番状態が、20年近く続きました。当時の子供達の間でジャッキーフィーバーが巻き起こったほどのスター。

ということで、何をどうしようとジャッキーはジャッキーとして刷り込まれており、冴羽獠にはなりえませんでした。まあ、バリバリカンフーで戦うし、銃の名手ってシーンもあまりないですからね…。古代進のカッコしたキムタクに違和感バリバリなのが近いかしら。

 

オープニングから原作イラストを使用して、主題歌もジャッキーの歌うシティーハンターのテーマがながれ、気合の入れ方が伺えますが、スタートすると普段のジャッキー映画よりだいぶコミカルより。細かいギャグが散りばめられており現代ではかなり辛いです。有名な春麗のコスプレに代表されますが、なんかこうシティーハンターの解像度が低くて作中の遊びが多いわよね…。特に本筋と関係のないとんねるずの「ガラガラヘビがやってくる」の広東語カバーがフルバージョンでライプパフォーマンス込みで流れたり、ストリートファイター2のコスプレをして、原作再現して戦ったり。

f:id:jiholeopardon:20210929141257j:image

f:id:jiholeopardon:20210929141309j:image

 

 

謎なのが、バカラに強いギャンブラー。

テロリストが金持ちを集めて、バカラで勝負してテロリストが勝ったら死刑、負けたらもう一度勝負という内容で乗客を殺していくのですが、女の乗客を守ってテロリストとバカラ勝負を行い29連勝で死刑を防ぎます。30回目に勝てない手が来ると、カード投げでテロリストを倒していくというかっこよさ。テロリストの戦力をかなり削いでくれますが、特に原作再現でもネームドキャラでもない無から生えてきた映画版のみのオリジナルキャラクター。

ジャンプ本誌ではブラックエンジェルズ飛鳥や男爵ディーノがトランプを武器に活躍しましたが、実写でトランプ武器のキャラなんてこれでしかみたことがないレアキャラです。何故オリキャラをこんなレアな設定にしたのか…。また、こいつジャッキーとの絡みがほぼなくて突然生えてきてそのまま退場するんですよね。「シティーハンター」を映画にする上で絶対に必要ないエピソード。この辺りに、監督の、タイトルは拝借したけどやりたかったことは違うんだよね感を感じます。

 

最終的には、獠がテロリストを退治してめでたしめでたしで終わるんですが、ガンアクションが薄く、カンフー過多、コミカルシーンが多目という以外にも、全編を通して獠と香の関係が、原作の「お互いを信頼している最高の相棒であり、互いに憎からず思っているが素直になれない」ではなく、「香は明らかに獠のことが好きでアプローチを望んでおり、獠は槇村との約束で手は出さないが、美しく育った香のことを恋愛対象にしたいと思っている。」あたりはまだしも、獠が香を仕事上の相棒としては全く信頼していない、香も仕事より恋愛優先という描写が原作との乖離を大きくしています。

 

獠が香をじゃけんに扱うシーンに、原作にあった密かな愛情が漂わないし、香は獠に対してあからさまに「女」を出すことを躊躇しないんですよね。原作の掘り下げが薄すぎて残念でした。

 

90年代は北斗の拳シティーハンターろくでなしブルースと原作の売れ行きに反して、ことごとく原作解像度が低いので、漫画実写化が地雷というイメージを作り上げた戦犯な期間な気もします。思い浮かぶ実写化映画の成功例2000年以降が多いんですよね。

 

35点 3敗1分。