津尾尋華の漫画実写化映画鑑賞

漫画の実写映画の感想など書いていこうと思います。

魁‼︎男塾 2008年

魁‼︎男塾 2008年。坂口拓監督・主演。

 

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B級漫画実写映画化としては最高峰と津尾さんが推してる男塾の登場です。

 

漫画実写映画の主な失敗は、

①尺が足りないため、話をまとめるために強引にエピソードを削ったため、意味がわからなくなってしまったストーリー

②アクションやファンタジー物にありがちな、CGや特撮で処理をしているが予算が足りず誤魔化しきれない安っぽさが漂う

③事務所の都合で配役された、演技力の厳しいアイドルや旬の俳優•女優による演技

④①と③の合わせ技で産まれた原作に存在しないオリジナルキャラ。必然性なく性別の変わる原作キャラ。

⑤キャラの内面描写は再現されないのにとりあえず見た目だけ原作に合わせた、無理矢理な髪型や、三次元だときつい髪の色をしたキャラ

 

あたりが主な原因で、逆に多少ストーリーや外見をいじっても、キャラクターが原作らしい行動をとるのであれば、きちんとキャラを掘り下げてくれているということで評価される傾向があります。

 

失敗例はいろいろ浮かぶと思うのですが、まあ代表はデビルマンドラゴンボール鋼の錬金術師あたり。成功例としては原作を改変しつつもキャラのブレがなくまとめたデスノートDMCカイジあたり。

 

前置きが長くなりましたが、男塾は、抑えるところは抑えつつ、原作のエピソードをバッサリカットしてオリジナルエピソードを入れてるんですが、これがガッツリマッチしており、まあ原作でやってもこうなるよな!っという展開のため、好感度が高いです。キャラクターがわかってるというか、無駄エピソード感がない。冨樫=照英をあてがきしてるのも強いです。

 

原作通りなら直進行から始まり、油風呂、男塾名物 愕怨祭あたりを経て驚邏大四凶殺なんでしょうが、構成はだいぶ変えてあります。

 

入塾前日から開幕、車に轢かれるがピンピンしてる虎丸、兄貴の墓参りをする富樫、女をはべらして豪学連に絡まれる秀麻呂、それを助ける桃。ガッツリ街中で日本刀背負ってます。

 日本語ができて、Jができる俳優がいなかったとのことでJと雷電は存在自体がカット。まあ、往年のドルフラングレンでも引っ張ってこないときついと思いますので英断かと思います。話のメインは桃と富樫、一般人代表の秀麻呂の3人に絞り、秀麻呂の反応で男塾の異常さを際立たせながら、富樫に男塾らしいかっこよさを演じさせます。この役割分担が原作と違いつつも、わかりやすい男塾の描写となっています。

 

入塾から鬼ひげ、飛行帽、塾長の登場。再現度たけえ!

塾長は、この人しかいねえっ!て感じの麿 赤兒

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流れるように2号生との対面式に進み松尾の瓶杯、田沢の紹介も入って理不尽な男塾事情が展開されます。2号生相手に戦いを挑む虎丸富樫、赤石先輩が登場して桃と分けたところで入塾式終了。

 

戦闘要員である桃、富樫、虎丸を目立たせ、田沢、松尾の顔見せ、鬼ひげ、飛行帽、塾長のキャラをたてて、二号生で男塾の異常さとついていけない秀麻呂をクローズアップ、後の豪学連に備えて赤石先輩の強さも抑えておくという完璧な導入。ここまで20分。

 

男塾についていけない秀麻呂を描写しつつ、九九の練習、ブリーフの落とし物の発覚、油風呂の流れ。油風呂はカットインから民明書房の絵巻物を背景に千葉繁の声でナレーションというこれ以上ないほど男塾リスペクトです。

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ここからオリジナルエピソード。

紙飛行機で富樫にラブレターがやってきます。デートする富樫。

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やってきた女子高生に一目惚れする富樫。

野次馬する秀麻呂、田沢、虎丸。

飯を食いに牛丼屋に連れて行く富樫。

デートの最後にからかわれてたわかる冨樫。怒る虎丸。

騙された女を守り「いいんだ。わかってんだ。俺なんかが女と付き合えるわけねえんだ」と自嘲する富樫。照英渾身の演技!

1人になってから男泣きする富樫を迎えにくる桃、帰り道、集まってくる仲間たち。

 暁‼︎男塾の黒須信長に恋愛話がありましたが、オリジナルエピソードでありながら、浮かれる富樫、冷やかす秀麻呂、怒る虎丸、集まる仲間たちの下りが見事に男塾を再現しています。値千金のオリジナルエピソード。

 

ここから、関東豪学連との対決。

Jがいない都合上大四凶殺が大三凶殺になっていますし、氷のリング、富士山の火口のリングはだいぶ簡略化されていますが、原作を踏襲。

突鋼槍が出た瞬間赤石先輩が負けるのはギャグかと思いましたが、虎丸対月光、富樫対飛燕、桃対伊達はみられる戦いでした。

ここに寿命蝋。大鐘音のエール、秀麻呂の塾旗あげが差し込まれ、秀麻呂の成長も描写されます。大満足。

 

良い点

キャラが原作に忠実

オリジナルエピソードに違和感がない

端折っても抑えるところは抑えて男塾感は強い

油風呂、雙生独居房、瓶杯、大鐘音、大塾旗、九九、ブリーフ禁止、塾長が10人いれば太平洋戦争は日本勝利だった、など細かくエピソードを拾っている

民明書房千葉繁の鉄壁のコンビ

バトルが原作ほど異次元ではないがそれなりに見られるものとしてまとまっている

長ランでのアクションが服がたなびいてかっこいい

鬼ヒゲは原作準拠ではなくカッコよくて、理解のある教官

ちょこちょこ入るギャグが概ね滑らない

秀麻呂の成長が映画の縦軸としてしっかりしている

 

 

悪い点

拳での連打などバトルが現代的

炸裂する月光のワンハンド•バックブリーカー

決戦前夜、熊の着ぐるみと特訓する虎丸

低予算すぎてシンプルになりすぎたのがカッコ悪い怒粧墨

 

総じて低予算の割に高い完成度でした。

押忍!88点